わたしのセスナ操縦訓練記

これはスカイスポーツ10月号に書き下ろした記事に加筆訂正したものです

 


まず急いでいる人のために結論から書きましょう。飛行機と空を飛ぶことの好きなものにとってアメリカはまさに”約束の地”である、と言えます。

わたしはいまは帰国して東京にいますが、以前は企業の駐在員としてロスアンゼルスに二年弱いました。
到着そうそうアメリカのパイロットに驚かされたのは出張したワシントンからロスへの帰り道
UA757に乗ったときのこと。窓のブラインドをあけてくれ、と機長のアナウンスがあり何かと思えばグランドキャニオン上空で降下し、かなり低い高度まで降りるとまるで観光のセスナのようにキャニオン上空を谷にそってロッキング(翼を左右に振る)しながら飛んでくれたのです。これには本当に驚かされた…

わたしは日本では小田原のビッグバードでハングをやっています。そこでロスでも初めハングをやろうと
Wind Sportsというクラブで一度飛ばせてもらいました。アメリカはサーマルも安定して強く、環境も抜群でハングも続けたかったのです。が、アパートの上の青い空を軽やかなエンジン音のセスナが飛んでいくたびに子供のころから思っていたセスナの訓練をしたい、という思いは強くなっていきました。
あるときロス在住の日本人セスナオーナーの高津さんと知り合ったのをきっかけに近くのトーランス空港の
Bravo Wingというスクールを紹介してもらいました。まずは軽く相談するくらいの気持ちで紹介してもらった日本人インストラクタのをたずねると、もうデモ(体験飛行)をやりましょう!ということでいきなり自分の操縦で離陸して空に舞いあがりました。このときも着陸以外はほとんど操縦をまかせてもらいました。いきなりやって難しかったのはタキシングと(もちろん)着陸ぐらいで、離陸や旋回はわりとうまくできました。
(彼とはその後、35ノットの嵐の中を飛んだり雲海の上を飛んだり良い体験をたくさんしました)

さらにびっくりしたのは入校が実に簡単で、日本ならありがちな入会金などいっさいなく保険などにサインする程度なことです。そしてもう次の都合の良いときから訓練開始です。これでもうスクールにはいったのか?と半信半疑ですらありました。トーランス空港はコストが高いほうといわれますがセスナ152で時間あたり$49CFI(インストラクタ)は時間当たり$30です。最低必要な飛行時間は40時間ですが、普通50-60時間くらいかかるそうです。CFIは皆明るくフレンドリーです。
ロスに観光旅行で行く人も体験はすぐできるのでお勧めです。わたしが教えますのでメールください。
また何時間か訓練することも可能です。ただし正規な留学ビザなしのノービザで行くと年間180日がリミットで本来目的ではないのでいささかトラブルが生じる可能性があるそうです。
(過去に実際にあったそうです)

ここには日本人の航空留学生も多くいます。ここの日本留学生たちは帰国してからパイロットをめざそうという人が多く、私のように単に趣味的にライセンスをとろうとする日本人が多いと思っていたのとはかなり印象が違いました。ヘリの訓練生が多いのですが日本ではヘリパイロットの需要の方が多いらしく、まじめに職業パイロットを考えているのだな、と思いました。彼らの真摯な態度からはわたしも少なからず影響を受けました。

よくアメリカでライセンスを取得した人は技量が低い、というレッテルを貼られるそうです。あるいはそういうところもあるのでしょう。しかしここロスアンゼルス空港周辺は世界でも有数のビジーエアスペースです。短い学生のクロスカントリー飛行でも空域管制官とのやり取りが大変です。こちらでライセンスを取得して帰る人は操縦免許のほかに生の英語力というすばらしい財産も身につくことでしょう。
ライセンスの取得には私のように週末来て半年から一年、留学でもやはり最低2
,3ヶ月はかかるそうです(ロスの1−3月は雨季なので避けてください)。わたしは残念ながら最後のクロスカントリーがエルニーニョの悪天候のためどうしても消化できず涙をのんで帰国しました。しかし、青い空がわたしを呼んでいる限りはいつか戻ってライセンスは取得します。

多くの人にとってはパイロットライセンスの取得は思っていたよりも大変かもしれません。現地のアメリカ人ですらかなりの数は挫折すると言います。しかし前述したように航空留学でくる日本人はそれをやり通す情熱を持っています。
そしてカリフォルニアにはきらめく青い海と、もっと深く青い空が待っています。そのふたつの青の接点をセスナで駆けのぼっていくとき、きっとあなたは自分の求めていたものがそこにあるのを見つけることでしょう。


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ブラボーウイング
日本人インストラクタも何人かいます


ソロ・クロスカントリー直後
ちょっと疲れた感じが。。。


手前のセスナが高津さんの"ワン・エコー・エックスレイ"
ブラボーでもっとも整備が行き届いたセスナです


クロスカントリー飛行中はこんな感じで
中間地点をチェックしながら飛びます